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繊細で人の死に敏感
公生が母を亡くしたのは11歳。
公生の母は公生を世界的なピアニストに育てるという夢を持って育てており、普通の家庭よりもずっと厳しい環境だったと思います。
その中で、母が思う通りに演奏しなかったことで叱咤と体罰を受け、感情を抑えることができずにいってしまった言葉が、母の死の原因ではないかとトラウマになっています。
どんなに厳しくてつらく当たった母でも、ピアノを通じてほとんどの時間を一緒に過ごしていた母を亡くすことがどんなに大きな衝撃だったか。
あまりのショックに、自分のピアノの音が聞こえないという状態になってしまうのですから、公生にとって耐えきれないくらいの衝撃だったのでしょう。
11歳という多感な年齢で大切な人を亡くした公生が、ほかの人よりもずっと、人の死に対して敏感なのもうなずけます。
小さいころにお母さんをなくしていて、しかもそれが自分のせいと考えるならトラウマになるよね
有馬 公生のピアノスタイル
有馬公生は母から厳しくピアノのレッスンを受けています。
幼いころから音符通りに全く間違えることなく演奏する公生についたあだ名は、「ヒューマンメトロノーム」「譜面のしもべ」さらには「コンクールだけのピアニスト」です。
母からは指導通りに演奏することを厳しく指導されていたため、正確無比に演奏することが有馬公生のピアノスタイルでした。
しかし、有馬公生本来のピアノの魅力は、自由で人の心をぐっとつかんで離さない、「カラフル」な演奏です。
椿の笑顔を取り戻し、井川絵見を感動させ、相座武士に絶対負けたくないと思わせた演奏こそ、有馬公生の演奏なのです。
宮園かをりの自分らしさを感じて、本来の演奏の仕方を取り戻したんだろうね
ヒューマンメトロノームで心がない演奏
まるで音符をすべて機械が繋いでいくような、恐ろしいほど正確な演奏。
公生の母は、たぶん公生に基礎を徹底して教えたいという気持ちで正確無比な演奏、音符通りの演奏を強いていたのだと思います。
間違えることなく難しい曲を弾きこなす公生は、いつしかヒューマンメトロノームと揶揄されるようになりました。
音符、楽譜に記された表現方法をなぞるように正確に弾きこなす公生は、数々のピアノコンクールを総なめ。
優勝するたびに天才少年といわれますが、逆に母親の操り人形など、心のない演奏だと否定する声もありました。
間違えないことは重要だけど心がないと
1つのミスも許さない完璧を原点においた演奏
公生の母親は、公生を世界的なピアニストに育てるという夢を持ち、公生を厳しく指導します。
その指導は、たった1つのミスも絶対に許さない、完璧な演奏をするための指導でした。
1音でも間違えば体罰が加えられるくらい、それは厳しいレッスンでしたが、幼い公生は必死に練習します。
時には脱走しようとしたり、子供らしくいやだとダダをこねたり、それでも厳しい練習を積み重ねていました。1つのミスも許さない完璧なピアノを弾く公生。
だからこそ、ヒューマンメトロノームなんて言われるほど、正確なピアノを弾けたんですね。
完璧な演奏は確かに素晴らしいけど音楽は心だよね
有馬 公生を変えた「宮園かをり」という人物
母の死は自分のせいだというトラウマを抱え、自分が弾くピアノの音だけが聞こえなくなってしまった公生。
それからずっとピアノから遠ざかっていますが、そんな公生をピアノに引き戻したのは「宮園かをり」でした。
人1人の力が人生を変えてしまうなんてすごいね
宮園かをりが自由な演奏に導いた
ピアノを弾けなくなっていた公生があるコンサートで、同じ中学に通うヴァイオリニスト「宮園かをり」に出会います。
自由で圧倒的で、個性あふれるその音色を聞き、公生のモノクロだった世界がカラフルに変化。
かをりは同じ学校の渡亮太が好きで、その仲を取り持ってほしいと椿に依頼します。
それから渡とかをり、椿、公生は一緒に行動するようになります。
かをりは公生に自分のバイオリンの伴奏をしてくれと依頼します。
母の呪縛にとらわれピアノを弾けずにいる公生でしたが、ライバルだった相座武士、井川絵見にもすすめられ、ピアノの世界に戻ります。
レッスンは亡くなった母の親友、瀬戸紘子。
公生はこうしてピアノの世界に戻したのも、また公生に感情あふれる自由なピアノへ導いたのもかをりでした。
かをりは重い病を持っていましたがその病を隠してでも、公生にピアノを弾いてほしかった、また自分も一緒に奏でたかったのです。
かをりの病気が悪化し急変したときには、病気で亡くなった母のことを思い出し、また大切な人を失うのかとピアノを弾けなくなりますが、手術を決めたかをりとコンクールを目指します。
対応も考え方もパワフルな女の子だよね
ピアノとバイオリンで語り合い演奏
公生とかをりが一緒に演奏するのは、藤和音楽コンクールだけです。ピアノを弾くことをさけていた公生でしたが、かをりの熱意に押されコンクールに出ます。
ピアノを弾くことが久しぶりだった公生ですが、元は天才と呼ばれていただけあり、かをりにしっかり合わせる力がありました。
しかし途中からまた音が聞こえなくなってしまい、公生の伴奏はバラバラ、このままではかをりに迷惑がかかると考え演奏をやめてしまいます。
するとかをりも演奏をストップ。
そして「アゲイン」を告げます。
そのまっすぐで強気の姿勢に心を動かされた公生はピアノの音が聞こえない状態で伴奏を再開。
その中でふと母の言葉を思い出し、自分の中に培われてきた技術や能力を出し始めたのです。
ピアノとバイオリンで言葉をやり取りするかのような素晴らしい演奏。
主役のかをりも自分の最大限の力を出し切り演奏が終わると、そこには割れんばかりの喝さいが待っていました。
このコンクールでの演奏が、2人にとって最初で最後の演奏となったのです。
ピアノの世界を封印した公生をピアノの世界に引っ張り出し、また弾けなくなりそうな公生も「アゲイン」という言葉で突き動かす、そんな熱く激しい演奏が2人の最後の演奏となりました。
かをりと語り合い演奏するはずだった幻のコンクールがある
実際には2人で演奏していませんが、かをりと出るはずだった東日本コンクール本選。
公生はかをりがいない中で、見守ってくれた人、待っていてくれた人、支えてくれた人、そしてかをりのためにピアノを奏でました。
かをりに自分のすべてが届くようにと願いながらピアノを弾く公生。
もう舞台はモノクロではなく、悲しげな色だけれどカラフルな色がついています。
かをりがこの場所にいるわけではないけれど、かをりを思い奏でるピアノは悲しみを背負い、まるでそこにかをりがいるかのような演奏でした。
演奏が終わると桜の花びらと一緒にかをりの幻影も消えます。
公生とかをりの最後の演奏は、この東日本コンクールだったのではないでしょうか。
いつのまにかかをりは公生の中にいたんだね
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