『ミステリと言う勿れ』の1巻目に掲載されている「寒河江健殺人事件」は、主人公の久能整が殺人事件の犯人として疑われるところから始まります。
久能整が寒河江健殺人事件とどうかかわっているのかや、あらすじ・ネタバレ・犯人を紹介していきます。
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1巻の寒河江健(さがえ けん)殺人編とは？久能整が事件に関わった経緯
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事件の発端は、寒河江 健(さがえ けん)が殺害されたことです。久能整が住む近所の公園で遺体が発見されました。
久能整は、寒河江と高校のクラスメイトで同じ大学に進学しています。
しかし、久能整からすると寒河江と接点はありません。2人は接点がないにもかかわらず、特徴的な髪形をしている久能整と寒河江が言い争いをしていたと目撃証言があると警察は告げます。
任意同行を求められた久能整は、警察署に何度も足を運ぶこととなりました。
寒河江健殺人事件のあらすじ・事件の概要
Ⓒ田村 由美 / 小学館サービス
寒河江 健(さがえ けん)が殺害されたことが事件の発端となり、近所で高校の同級生かつ同じ大学に通っている程度の関係であった久能整が公園で寒河江と争う姿を見たと証言があったことで任意同行を要求され、警察署に行くことになります。
その間、取り調べを担当するはずだった警官たちは、日々の鬱憤を久能整に聞かれてしまいます。久能整の視点で語られる考え方に感化され、何人もの警官が救われていきました。
かなり不思議な視点を持つ久能整に困惑している警察ですが、久能整が家で使用していた果物ナイフが何ブロックも離れたゴミ捨て場に捨ててあったことが発覚し、ついに捜索令状が下ります。
さらに、自宅にあるノートパソコンから寒河江に金を借りるための借用書のテンプレートまで出てきてしまいます。
寒河江健殺人事件の登場人物
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久能整(くのう ととのう）
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天然パーマでカレー好きな大学生。
近所で高校の同級生かつ同じ大学に通う寒河江健が殺されたことを知りました。
殺人の疑惑で警察に詰められますが、本人には覚えがありません。
しかし、警察から見ると有力な目撃証言があったり、自分の指紋付きの包丁が凶器として出てきたりしている、寒河江健の殺害容疑者筆頭と見られています。
寒河江 健(さがえ けん)
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久能整の高校時代のクラスメイトで同じ大学に通っていました。
久能整が住んでいる家の近所の公園で死亡。
久能整からは「金持ちのボンボンです。父親が何かの社長で親戚に議員さんがいて、こづかいをたくさんもらってて、チャラくて派手でモテモテ」と言われる人物です。
薮 鑑造（やぶ かんぞう）警部補
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奥さんと11歳の息子がひき逃げに会うも、当時張り込み中だったため、死に目に立ち会えませんでした。
ひき逃げの犯人はまだ捕まっておらず、「犯人を必ず捕まえる」と躍起になっています。さらに、久能整を犯人と断定するような物言いをしており、「必ず捕まえる」と啖呵を切っていいます。
今回の事件を取り仕切っており、取り調べで久能整の胸ぐらをつかむような、暴力的な行動もとっている過激派です。
乙部 克憲（おとべ かつのり）巡査
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娘を可愛がって手育てたつもりが、「お父さん臭いウザい」と言われ生意気に育ったと思い悩んでいます。
しかし、久能整に「おれは生き物として当然の反応。遺伝子が近い相手に警報を出しているだけ。乙部さんの育て方は間違っていない。娘さんはちゃんと大人になろうとしている。」と言われ、久能整の取り調べにやりにくさを感じています。
風呂光 聖子（ふろみつ せいこ）巡査
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風呂光は自身の存在意義について悩みを抱えています。
大切にしていペットの猫が死に、職場では女だからと終始なめられており、ストレスを抱えている様子。
しかし、久能整が「おじさんたちは徒党を組んで悪事を働くことがある。おじさん達の不正を見張る位置」にいる生き物であればいいとアドバイスを受け、久能整の容疑を晴らすために奔走することとなります。
池本 優人（いけもと ゆうと）巡査
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お調子者の既婚者で、奥さんのお中には5カ月になる子供がいます。
しかし、最近奥さんの機嫌が悪く困っている様子。
久能整に「名前のない家事はせず、ごみ捨てをしても奥さんの体はシンドイのでは？」と言われ、ハッとします。
さらには子供の名前のことで奥さんともめてしまい…奥さんと何かあるたび久能整にアドバイスを貰いに行っています。
青砥 成昭（あおと なりあき）巡査部長
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２年前冤罪事件を起こしており、無実の人を逮捕した経歴を持ちます。
しかし、青砥は「今でもあいつが犯人だと思っている。いつか必ずあいつを挙げてやる」とまで言っており、犯人を疑っている様子。
久能整から「真実は主観によって変わるから１つではない。けれど事実は1つしかない。警察が調べるのはそこだ。」と言われ、古い事件を調べ直し始めます。
寒河江健殺人事件の解決編
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寒河江健殺人事件の全貌や犯人を紹介していきます。
※ここからはネタバレが入ります。ご注意ください。
久能整の推理
久能整は、捜索令状が出され自宅のノートパソコンから見覚えのない借用書のテンプレートを証拠として押収されます。久能整はついに濡れ衣を着せられる前に犯人を見つけ出そうとします。
しかし、久能整は大学生のため捜査はできません。
そのため警察署から出ず、風呂光に以下の捜査内容を依頼します。
- 台所に果物ナイフがあったか。
- 玄関のカギのこじ開けた形跡があるか。
- 大家さんが留守の間に誰か人を入れていないか。
- 1年前に家のカギを落し大学近くの交番に届いていたことがあったため、誰がカギを拾ったのかの確認。
- 誰が家の中から証拠を見つけたのか。
これら5点を教えて貰った久能整は、犯人が誰であるのかが分かったようです。
そして最後に、高校時代の寒河江の部活の先輩で「人をひいた」と証言した人を探して連れてくるよう、風呂光に依頼します。
犯人は薮 鑑造（やぶ かんぞう）警部補
犯人は薮 鑑造（やぶ かんぞう）警部補です。
1年前に久能整の家のカギを拾ったのは薮警部補でした。
久能整の家の中から証拠を見つけたのも薮警部補です。
薮警部補はたまたま寒河江と会釈した久能整が落としたカギを拾いました。型をとり、鍵を使って久能整の自宅に侵入。果物ナイフとコンビニ袋を盗み、ノートパソコンに証拠を入れておき、さらには目撃者まで用意して復讐をはたします。
久能整に犯行を暴かれ自供した薮警部補は、「奥さんと子供は喜んでくれるだろう」と後悔の無い顔で語りました。
殺害の動機は「奥さんと子どもを殺した復讐」
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久能整は、寒河江が高校3年の春に高級車を買ってもらったこと…そして、おととしの夏に模試の成績が下がったからと取り上げられたと話していたことを思い出します。
久能整の想像では、「寒河江が薮警部補の奥さんと息子さんをひき、こっそりと車は処分されたのでは？」と言っています。同じ発想に至った薮警部補は、奥さんと息子をひき殺した犯人として寒河江に直接会いに行きます。
しかし、寒河江は犯行を認めず「自分の身内には有力者はたくさんいる。おまえなんてどうとでも消せる。金が欲しいならやるから2度と顔を見せるな」と言い放ち、寒河江が持っていた果物ナイフで刺し殺されました。
寒河江健殺人事件の事実
寒河江が薮警部補は奥さんと息子をひき殺した犯人と思われましたが、風呂光が寒河江の高校時代の部活の先輩たちに当たり「寒河江の車で人をひいた」と話す人を見つけ出します。
寒河江が殺されたことで怖くなって自首しようと考えていたようです。あっさりと署に連行されてきました。
自首してきた寒河江の高校時代の部活の先輩は、おととしの夏に警部補は奥さんと息子をひき殺したと自供いています。
寒河江の身代わりでなければ、薮警部補は無実の寒河江を刺し殺したことになります。
犯人のこれからを予想
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薮警部補が犯人だと突き止めた後、久能整は復習を成功させた薮警部補が「妻も息子も喜ぶ」と言ったのに対し「復讐は楽しかったですか？」と淡々と聞きます。久能整は家族が生きていた頃から、家族行事にも一切いかずに命をかけていた刑事という大切な仕事を復讐のために捨てたのだと糾弾します。
かつて子供だった久能整の視点で、「忙しいといっていたのは僕たちに会いたくないからで、僕たちが死んだからもう忙しくなくなったんだね」と酷なことを言い放ちます。もちろん薮警部補に逆上されますが、寒河江が奥さんと息子をひき殺した犯人ではない可能性を示唆し、薮警部補を絶望に追い込みます。
久能整は、「奥さんと息子さんの好きな物を探し、供えてあげる…そんな、これから家族の好きだったものを探し始める道もあるのでは？」と諭し、警察署を去りました。
薮警部補はこれから逮捕され罪を償うこととなるでしょう。しかし、出所後は奥さんと息子さんが生きていた頃の写真や思い出の品の中から好きな物などを探し、家族に今までの時間を償う人生が待っているかもしれません。
寒河江健殺人事件の名言カルタ
Ⓒ田村 由美 / 小学館サービス
久能整独自の視点で語られる考えは作中に何度も名言という形で登場します。
事件後に掲載されている名言カルタは作中の楽しみの一つと言えるでしょう。
名言を振り返ってみるのも楽しいと思います。
ごみすてどこからですか
池本巡査は妊娠5カ月の奥さんがいますが、喧嘩をしたようです。
なかなか帰ってこれないこともあり、「警察官って職業を理解してほしい」と思いつつも、「ごみ捨てはやっているから感謝しいてほしい」とも言っています。しかし、池本巡査は集められたごみを家からゴミ捨て場に持って行っていくだけでした。
久能整は池本に「ゴミ捨ては家じゅうのゴミを集め、分別して袋を取り換えて、生ごみの水を切って排水溝をついでに掃除して、ゴミ袋の在庫をチェックする…そこまでが面倒。家からゴミ捨て場にもっていくだけで感謝しろと言われても、奥さんは身体がしんどい」と池本に伝えます。
池本巡査は家事の大変さや奥さんの頑張りを理解しきれてなかったからこそ、言われてハッとしたことでしょう。
わたしのそんざいいぎってなんですか
「この署のおじさんたちになめられないようにすることが、風呂光さんの存在意義」と久能整は伝えていました。
一晩意味を考えた風呂光は自分の存在意義について久能整に問いただします。
配属された部署内で一人浮いている自分の役割を教えてくれる人がいたら、指針にしてしまうことでしょう。風呂光にとって久能整は警察署のおじさんよりも信じられる人だったのかもしれませんね。
にんげんがさんしゅるいいたらいいなあと
風呂光に存在意義について聞かれた久能整は、男と女ともうひとつ別の種類あったらいいな言い出します。
権力サイドに近いおじさんたちは徒党を組んで悪事を働きやすい…と、久能整は考えており、風呂光にように女性が個人でいると取り込まれたり脅されたりして排斥されてしまう可能性があると言います。
だから、不正をしづらいように見張れる別の生き物であってほしいと、風呂光に伝えました。
しんじつはひとのかずだけあるんですよ／じじつはひとつです
青砥は「真実は1つしかない」と言いますが、久能整は「真実は1つじゃない。」と反論します。
「思い込みによっては真実が人によって異なってしまう…人は自分の主張でしか物事を見られないため、それが正しいとしか言えない。結局は第三者の神のような立場の人間がいないと見極められない。だからこそ、真実は人の数だけあるんですよ。でも、事実は1つしかない。警察が調べるのはそこです。」と言い切ります。
青砥に「真実は人の数だけあるんですよ。」という久能整は、それこそが警察が見つけるべき「事実だ」と告げます。主観で判断するのではなく、１つしかない事実を見つけて罪を裁くべきだ…ということなのでしょう。
冤罪で逮捕されそうな自身の状況と合わせて、一度冤罪事件を起こした青砥を静かに糾弾しているような言葉ですね。
こどもだったことはあります
久能整は薮警部補に子供の気持ちを勝手に語ります。
自分の長年の想いも知らない大学生に知りもしない自身の子供の気持ちを語られれば激高もするでしょう。しかし、薮警部補と同じように警察で無ければ結婚もしていないし、子供もいません。
久能整はそれでも「こどもだったことはあります」と言い、子供の目線で薮警部補の復讐が独りよがりだと突きつけます。
薮警部補にとっては触れられたくない部分で考えたくもない思考でも、久能整は自身の境遇を想いながら話しているのかもしれませんね。
まとめ
『ミステリと言う勿れ』の1巻に収録されているエピソードを紹介しました。
久能整が警察とかかわりを持ったエピソードであり、これから先どんどん新しい事件に巻き込まれていきます。
久能整のつぶやきに似た名言や推理パートも楽しみたいですね。
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