2012年の放送以来、続編シリーズや劇場版など数多くのシリーズが制作されてきた『PSYCHO-PASS(サイコパス)』。
配信サービスなどでも多くのシリーズが並んでいる状態にありますが、その中でも特別な立ち位置にあるのが“『PSYCHO-PASS 新編集版』”です。
一見どんな立ち位置にあるシリーズなのか、わからないこの新編集版がどういった作品なのか。他のシリーズと何が違うのかを解説していきます。
『PSYCHO-PASS(サイコパス)』新編集版とは
『PSYCHO-PASS』新編集版は、第1期と第2期の間に制作された、第1期のアレンジバージョンです。
サイコパスの第1期は2012年の10月〜2013年3月の2クールにかけてテレビ放送されました。その後、2014年10月〜12月の1クールにかけて第2期が放送されます。
この第2期の放送の直前となる2014年7月〜9月の1クールにかけて、改めて第1期の内容をおさらいするように放送が実施されました。
ただし、そのまま本編を再放送するのではなく2クールにかけて放送されたものを1クールの期間で放送するために再編集し、1期全22話を、全11話の半分にまとめています。
しかも、1話1時間番組として放送されたので、放送内容が削られるどころか追加シーンが加えられたり、この追加シーンを踏まえて新たに脚本を起こしていたりと完成度を高めたものとなっています。
『PSYCHO-PASS(サイコパス)』新編集版と通常版の具体的な違いはどこ?
新編集版と通常版は、話の大筋に違いはありませんが、以下のような違いがあります。
- 1話の長さが23分から46分に倍増している
- 通常版の2話分を新編集版の1話分に編集している
- 一部作画がBlu-rayリリース時の修正版に差し替えられている
- 一部通常版になかったシーンが追加されている
- BGMや映像、セリフの内容やタイミングに微調整が施されている
- アニメーション制作にタツノコプロが参加している
- 18話の作画崩壊が改善されている
話数単位でも通常版から追加されているシーンを以下にまとめました。
全体的に、狡噛慎也(こうがみ しんや)や槙島聖護(まきしま しょうご)が後の行動に至る動機などがより分かりやすくなるシーンが追加されています。
新編集版1話の追加シーン
槙島がノナタワーで街を見下ろしながら人間に対する思想を語るシーンと、狡噛がシビュラシステムへの疑問を抱いていたことを回想するシーンが追加されています。
槙島という人物像の不気味さと、狡噛の今後の行く末を暗示させ、最終回の二者の対立に呼応する追加シーンでした。
新編集版2話の追加シーン
冒頭の槙島とチェ・グソンが事件を企てていることを示唆するシーンと、後半で常守朱(つねもり あかね)が寝そべりながら犯罪者と戦う時の狡噛の違和感について考えるシーンが追加されています。
槙島たちがどういう意図を持って犯行に臨んでいるのかと、常守の心境の変化と、狡噛の思想について考えていこうとする姿勢を分かりやすくする追加シーンでした。
新編集版3話の追加シーン
車中で槙島とグソンが御堂将剛(みどう まさたけ)について話し合うシーンと、槙島を追う佐々山光留(ささやま みつる)に狡噛が連絡を取り、ついには佐々山の無残な死体を発見する過去のシーンが追加されています。
冒頭ではタリスマン事件に対するそれぞれの姿勢や、槙島の実験的な一面を描き、後半では狡噛にとって佐々山との一件がどれだけトラウマを与える事件だったかを表す追加シーンでした。
新編集版4話の追加シーン
槙島が王陵家の芸術作品を眺めながら思想を語るシーンと、刑事課一課の会話を何者かが盗聴しているシーンが追加されました。
桜霜学園女生徒連続殺人事件に対して槙島がどう思っているのかを通して、事件に対するテーマと、刑事課1課が狡噛に対する配慮が成されていたことに加えて、すでにそれを第三者が把握していたことが分かる追加シーンでした。
ちなみに、放送当時に佐世保女子高生殺害事件が発生したことで、事件を想起させるということで放送は延期され、配信のみでのお披露目となっています。
新編集版5話の追加シーン
雑賀教授の講義を狡噛と宜野座伸元(ぎのざ のぶちか)が受けるシーンと、泉宮寺 豊久(せんぐうじ とよひさ)と会話した後の槙島が狡噛に対する思いを独白するシーンが追加されています。
前半のシーンでは若い頃から狡噛の勘の鋭さに加え、現在起こっている事件がすでに過去に予見されており、起きるべくして起きたこと、そして後半のシーンでは槙島が狡噛に対して執着を強めていることが、分かりやすく描かれていたシーンでした。
新編集版6話の追加シーン
泉宮寺の所有地の地下にて槙島聖護が事件を眺めながら思いを馳せるシーンと、槙島が船原(ふなはら)ゆきを殺害した後、街を一人歩きながら狡噛や常守に思いを馳せるシーンが追加されています。
黒幕として動く槙島が、各シーンでどんなことを考えていたのかを具体的に描き、槙島が異色の存在であることとどれだけ強敵であることなどがより分かりやすく描かれているシーンとなっていました。
新編集版7話の追加シーン
宜野座が、幼い頃に父親の征陸智己(まさおか ともみ)に拳銃を見せてもらった過去を思い出すシーンと槙島とグソンの二人がチェスをしながら槙島の思想を語るシーンが追加されています。
前半のシーンでは、宜野座が内心の父親に対する思いを描くことで、二人の因縁がより切なさを増すつくりになっています。後半のシーンではヘルメットの事件に対して槙島がどういう考え方で臨んでいるのかを描き、批評性を高めるシーンとなっていました。
新編集版8話の追加シーン
槙島がグソンに、伊藤計劃(いとう けいかく)の作品を例にあげながらシビュラシステムに対する思いを語り合うシーンと、車中で縢秀星(かがり しゅうせい)が過去を思い出しながら、自身の現状に思いを馳せるシーンが追加されています。
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