映画「風立ちぬ」の中で、二郎と本庄が夜にドイツの町を散歩するシーンがあります。
その道中で逃げる男とそれを追う集団を目撃しますが、結局逃げた男はだれだったのか?あのシーンは何の伏線になっていたのか?
よく分かりませんでしたよね。
「今の男は格納庫にいた奴だ。」
— 梁井 朗@北海道美術ネット別館 (@akira_yanai) 2015年2月20日
このシーンが、わかんないんだよな。いったい何の意味があるのか。 #風立ちぬ
このシーンは作中ではっきりと伏線回収もされないので、視聴者側の考察力に任せられています。
今回はこの疑問について調べてみました。
[風立ちぬ動画視聴]
夜のドイツで逃げた男はだれ?
結論から言うと、逃げた男は名もない盗人で重要人物ではありません。
この場面でのメッセージ・伏線は別にあります。
順を追って説明していきますね。
本庄のセリフから分かること
逃げた男の後に、それを追う数人の男が現れます。
それに対して本庄はこう言います。
「今の男は格納庫にいたやつだ」(本庄)
出典 風立ちぬ
格納庫にいたやつ?誰の事?
となった人もいると思います。
こいつです。
風立ちぬブースでは、勝手に格納庫に入る度に警備員がとんてぎてドイツ語で捲し立てられる#こんなジブリパークは嫌だ pic.twitter.com/13TRxCFZAQ
— KYM (@takeman8311) 2017年6月1日
昼間にドイツの飛行機を見ていた際にやたら文句を言ってきていた守衛ですね。
こいつが夜は盗人を追いかけていたということです。
ではそれが何を意味するのか?
ユンカース社とユンカース博士
話が少し戻りますが、昼間に飛行機を見ていた場所は、ドイツの有名な航空会社・ユンカース社の格納庫です。
そして二郎と本庄の見学を邪魔していた守衛を呼んで、見学の許可を与えたのがユンカース博士です。
このシーンで妙な点があります。
この守衛は最初
「我々は日本人をウロウロさせるなと命令されている!」(守衛)
出典 風立ちぬ
と発言しています。
てっきり命令しているのはこの社のトップ・ユンカース博士だと思いましたが、そうだとすれば二郎と本庄に見学の許可を出すのは変です。
この点から考察するに、命令を出していたのはユンカース博士ではなく、別の人物です。
(ユンカース博士は最初から格納庫を自由に見てもらって構わないと思っていた)
ここから以下の仮説が成り立ちます。
- 守衛は夜の盗人を追いかけていた仕事の方が本業で、本業の上司から日本人に機密を漏らさないよう命令されていた。
- 本業の仕事でユンカース社に潜入していた。
カストルプのセリフから真実を考察
後に二郎が出会うドイツ人・カストルプはこんなセリフを発します。
「ユンカース博士は追われマス。
政府とケンカしてイル。
破裂スル。」(カストルプ)
出典 風立ちぬ
ユンカース博士はヒトラー政府と対立しており、政府から追われているということが分かります。
このセリフから察するに、あの守衛は十中八九政府側の人間です。
命令を出していたのも、日本の特高にあたるドイツ秘密警察組織の上司でしょう。
このドイツ側の情勢を暗に示したのが、あの夜の散歩のシーンだったのです。
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史実でのユンカース博士
ちなみにユンカース博士はフーゴー・ユンカースという実在した人物です。
エンジン技術者としての実績を元に、航空機産業に関わりだしユンカース社を立ち上げます。
それから社は航空機産業で成功しますが、ユンカース博士はナチス政権に批判的だったために最終的には政府に会社を乗っ取られ、追放されてしまうのです。
史実と照らし合わせても今回の仮説は間違いないといっていいでしょう。
まとめ
まとめると
- ドイツで夜に逃げていた男は名もない盗人で重要人物ではない
- 昼間の守衛はドイツ政府側(秘密警察)の人間だった
- 守衛はユンカース社に潜入し、日本人だけでなくユンカース博士も監視していた
このシーンが示唆していたのは以上のことでした。
流石にわかりづらすぎますこの伏線(笑)
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