風立ちぬのタイトルについて
- 「風立ちぬ」って結局どういう意味?
- 風立ちぬの「ぬ」って古文ではどういう意味・文法なの?
と疑問を抱いている方も多いと思います。
今回はタイトルに込められたメッセージと併せて「風立ちぬ」の意味の解釈の仕方を解説していこうと思います。
風立ちぬの「ぬ」について
まずは風立ちぬの「ぬ」について、古文的な読解でタイトルの意味を読み解こうと思います。
古文での意味
風立ちぬの「ぬ」は古文では完了・強調の意味をさします。
つまり風立ちぬというタイトルは「風がたった!」という意味ですね。
しかし、このタイトルの表したかった微妙なニュアンスを掴んでもらうにはポスターの二郎を見てもらうと分かりやすいと思います。
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— タワーレコード渋谷店 (@TOWER_Shibuya) 2014年6月3日
二郎が通り抜けていった風を見つめているように見えませんか?
個人的には、この「あっ、風が…」という風が吹き抜けた一瞬の微妙なニュアンスを表したのが風立ちぬというタイトルだと思います。
古文での文法
風立ちぬの古文上の文法を解説していこうと思います。
学校のお勉強的なお話になってきますので、意味だけ分かればオッケーという方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。
風立ちぬの「ぬ」は強調・完了の助動詞で、直前の活用語の連用形に続きます。
今回の活用語は「立つ」ですね。
この連用形「立ち」に助動詞の「ぬ」がついて「風立ちぬ」となるわけです。
<余談>
打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」と間違いやすいのでこのタイトルの解釈が直観的に分かりづらいと感じる方が多いと思うのですが、打消しの助動詞「ぬ」として使う場合は「風たたぬ」になります。
風立ちぬの洋題
洋題は「THE WIND RISES」です。
外国の風立ちぬのポスター最高じゃん
— ペレ (@MT_Pele) 2018年8月16日
ジョーが声優してるらしいからこっちの方が見たい……… pic.twitter.com/2rFxToVLZf
「A WIND」であれば一般的な概念としての風を表しますが、「THE WIND」なので、ここでは「つい今しがた吹き抜けていったあの風」を示しています。
また「RISES」は現在形なので完了の意味を含む邦題の「ぬ」とは文法的には違っていると言えます。(過去形はROSE)
しかし個人的には邦題の「風立ちぬ」は吹き抜けていった風を”見ている一瞬”を表していると解釈しているので、そのニュアンスを汲んで「RISES」にしたとすれば訳者の方はよく考えておられるなと感じました。
ただ、やはり英語だとアルファベットという記号の組み合わせでしか単語を表現できないため、微妙なニュアンスの表現には限界があるなと感じましたね。
裏を返せば、日本語って物凄く微妙なニュアンスまで表現できるんですよね。
こういった芸術表現においては世界最高の言語だと思います。
風立ちぬのタイトルの意味と伝えたかったこと
さて、「風立ちぬ」のタイトルの意味とその微妙なニュアンスについてお伝えしてきましたが、この作品の内容とどう関わっているのか?
こちらについて考察していこうと思います。
この作品では「風が立つ」というシーンは全て重要なシーンです。
これらのシーンの意味を理解することが、タイトルに込められた意味を理解することに繋がってきます。
冒頭の列車にて、二郎の帽子が風によって飛ばされ、それを菜穂子がキャッチするシーン
軽井沢にて、菜穂子のパラソルが風によって飛ばされ、それを二郎がキャッチするシーン
これら2つのシーンは実は対比的に表現されています。
最初は二郎が風に飛ばされたものを菜穂子がキャッチするシーン。
次は菜穂子が風に飛ばされたものを二郎がキャッチするシーン。
そしてどのシーンでも「ナイスキャッチ!」という同じ言葉を使っていますね。
これは、似たような状況を立場を入れ替えて表現することで二郎と菜穂子の再会を劇的なものとして表しています。
これらのシーンが表しているのはこの物語の”恋愛”という側面です。
飛行機に関して空想したり、夢を見たりするシーン全般
こちらに関しては複数のシーンがありますが、飛行機に関するシーンというのはほぼ全て、風が立っています。
これらのシーンが表しているのはこの物語の”人生の夢”という側面です。
つまりこの物語において、主人公二郎の”恋愛”と”夢”に関するシーンでは風が立っていました。
この物語において、風が立つというのがどういうことなのか、を完璧に表している一言がカプローニ伯爵の言葉です。
風はまだ吹いているか。ならば生きねば。 カプローニ / 風立ちぬ pic.twitter.com/1y2xURuRSy
— スタジオジブリ名言bot (@jiburicollecti2) 2019年4月10日
この物語における「風」というのは二郎の生きる”希望”を表している。
カプローニ伯爵はまだ風は吹いているか、少年よ。と二郎に問いかけますが、これはつまり二郎の胸に生きる「希望」はまだ残っているか?と聞いています。
二郎にとって生きるための”希望”は2つあって、それが”恋愛(菜穂子)”と”夢(飛行機)”なんです。
そして二郎は2つのうち”恋愛(菜穂子)”を失いましたが、”夢(飛行機)”が残っています。
だから生きねばならない。
二郎にとってはこの2つですが、視聴者側にまで視野を広げると人それぞれ「風」に当たるものが違うと思います。
「風」というあえて抽象的な比喩表現を使うことで、万人に当てはまる伝え方をしたのです。
「風」が吹いている限り、どんなことがあっても人は生きていかなければならない。
それを視聴者に伝えているのが「風立ちぬ」というタイトルなのだと思います。
まとめ
まとめると、
- 風立ちぬの「ぬ」は強調・完了の助動詞で「風が立った」という意味
- 風立ちぬの洋題は「THE WIND RISES」
- 風立ちぬにおけるタイトルに込められた意味は”希望”が胸に残っているうちは人は生き続けなければならないということ
でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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