『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』は宇宙世紀を舞台とした新たなシリーズ作品として月刊ガンダムエースで連載されていた小説作品です。
原作の完結後にはOVAおよびTVシリーズとして、アニメ化も果たしました。
本記事では、リディの生い立ちや、劇中での行動により多くのファン達から”嫌われてしまった理由”を紹介。
さらに、ラプラス事変後も戦場に復帰した理由を始め、その後の人生についても迫ります。
本作品の人物相関図は「機動戦士ガンダムUCの人物相関図!登場人物・キャラクターの一覧を解説」の記事をご覧ください。
リディ・マーセナスとは
リディは『ガンダムUC』の時代(U.C.0096)における、地球連邦軍の青年パイロットです。
本作品においては、もう1人の主人公という立ち位置でもありました。
ただ、初登場時やバナージ達と出会った時(ネェル・アーガマ)から終盤までにかけて、所属する艦や部隊が転々と変わっていた点も大きな特徴です。
リディのプロフィール
生年月日 | U.C.0073 |
年齢 | 23歳 |
家族構成 | 高祖父(リカルド)、父親(ローナン) 姉(シンシア)、義兄(パトリック) |
階級 | 少尉(ガンダムUC)→中尉(獅子の帰還) |
搭乗機体(MS) | リゼル デルタプラス バンシィ(『ガンダムUC』小説版) バンシィ・ノルン(『ガンダムUC』アニメ版) |
リディは地球連邦政府の初代大統領であったリカルドの子孫である上、地球連邦政府中央議会の大物議員であるローナンの息子として誕生しました。
これ程までに恵まれた家系で生まれたため、本来ならば安定した将来や人生が保障されていたにも関わらず「パイロットになりたい」という夢のため、家を飛び出してしまいます。
ただ、この時にリディが出て行った理由には、自身の夢だけでなく“政治家である父親への反発心”や「マーセナス家の重圧から逃れたい」という思いも込められていました。
それでも連邦のネェル・アーガマに配属された形でパイロットになる夢を叶えたものの、その後の『ガンダムUC』本編でのバナージやミネバ達との出会いにより、リディの精神や人生が大きく狂わされていったのです。
本当の夢は飛行機パイロットだった
リディの夢がパイロットであったことは『ガンダムUC』本編で明かされていました。
しかし、リディが本当になりたかったのはMS(モビルスーツ)ではなく「飛行機パイロット」であることがコミック作品『獅子の帰還』4話で判明しています。
これはカイとの会話中に話していましたが、リディがパイロットとして1番欲しかったのは「この世で1番速く強い力」だったのです。
ただ、この力を欲しかった理由も結局は「マーセナス家から離れたい」という願望からきていました。
リディの性格 | 善人から狂気に変貌した理由とは
リディは根本的に善人かつ優しい性格ですが、ストーリーが進行していく度に、性格と同時に顔つきも狂気へと変貌していきました。
この理由には、ミネバも連れて家に戻ってから知らされた「ラプラスの箱を巡る“マーセナス家の因縁”」から始まり、ミネバへの求婚を拒否されたことから燃やし始める“バナージへの強い嫉妬心”が挙げられます。
地球に降下してから辛いことばかり続いたことに加え、マリーダからも指摘されていた「リディ自身の持つ生真面目さ」も災いして、精神を追い詰められた結果、リディの性格も一時的に大きく変えられてしまったわけです。
リディの声は声優「浪川大輔さん」が担当
リディの声を担当している声優は「ステイラック」に所属している浪川大輔さんです。
浪川さんはリディ役よりも先に「0080-ポケットの中の戦争-」の主人公・アルフレッド役でガンダムシリーズ作品に出演されております。
浪川大輔さんの代表作(キャラクター)は、以下のとおりです。
- 『Persona4 the Animation』主人公(鳴上悠)役
- 『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』ロード・エルメロイⅡ世役
- 『ルパン三世』石川五ェ門(3代目)役
- 『無職転生』ルイジェルド役
リディが嫌われた3つの理由 | 本当は共感されるべき存在
本作品のキャラクターにおいて、リディを嫌うファンが圧倒的に増えてしまったことは紛れもない事実です。
そこで、リディが嫌われた理由を大きく3つに分けて挙げてみます。
【理由①】地球に降下してからヘタレな一面が露わに出てしまったから
初登場時は善人かつ、バナージやミネバ達の良き兄貴分でいてくれた印象が強かったものの、ミネバを連れて地球へ降下してからは、予想外とも言えた程に“ヘタレな一面”を露わに出してしまいました。
OVA版4話で、父親(ローナン)からマーセナス家の因縁を聞かされたことでショックを受けながらもミネバに求婚しましたが、アッサリと拒絶された後には1人で悩み続けます。
この場面でリディをヘタレキャラと決めつけてしまうファンも多かったそうですが、これにはリディ自身にも原因があったわけです。
リディがどんなに裕福な家庭の息子とはいえ、ミネバにとっては出会って間もない男性からいきなり求婚されても、簡単に受けることなど出来ないのは当たり前というものです。
それでも、この後にはブライト艦長の率いるラーカイラムに配属してもらえたものの、これも父親がブライトに対して頼んでくれたおかげだったのです。
配属後もブライトへの「特別扱いしないでほしい」という頼みをした時点で「甘ったれるな!」と一喝されてしまう始末ですからね。
この場面のリディを、ファースト前半のまだ情けなかった頃のアムロと重ねて見えてしまったファンも多かったのではないでしょうか?
【理由②】バナージへの嫉妬心が情けないから
リディを嫌う理由として、ストーリー後半に入ってから露わに出し始めてきた「バナージへの嫉妬心」を挙げるファンも多かったようです。
特にOVA版5話で自分から去って飛び降りたミネバがバナージと良い雰囲気になってからの変貌ぶりは凄まじく、それ以降は最終話の前半までバナージに対して叫び続けますが…
その時に言っていた台詞の殆どが“負け犬の遠吠え”にしか聞こえなかったんですよね。
【理由③】ロニやマリーダを殺してしまったから
リディを嫌う理由として最も多く挙げられてきたのが、やはり「劇中でロニやマリーダ等の女性キャラ達を殺してしまったこと」です。
OVA版4話でのロニに関しては、どうしても撃てないバナージの代わりに撃ってくれたため、不可抗力だったとしか認めざるを得ません。
もしも、バナージだけでなくリディも撃てずにいたら、ダカールでの死者や犠牲者が更に増えていたはずです。
さらに、この時のリディの行為は、サイコミュの暴走を止められないロニを苦しみから解放したことにも繋がったのです。
しかし、OVA版7話では憎み続けてきたバナージから“リディ自身もニュータイプ”であることを指摘されたことで発狂しながら、ビームマグナムで自身の母艦であったネェル・アーガマを撃ち抜こうとしてしまいます。
さらに、その直後にクシャトリヤ・リペアードで身を挺して庇ったマリーダを殺してしまったのです。
ガンダムシリーズ作品の女性キャラの中でも絶大な人気を誇るマリーダを殺してしまったことで、リディはファン達から“憎しみの対象”にまでされたわけですね。
死ぬ寸前のマリーダから諭してもらえた後には、以前までの善人に戻り、後半からはバナージに加勢および、一緒にコロニーレーザーを食い止めようと奮闘しましたが…
ここまで汚名返上しても、ファン達の中にある「リディが嫌い」という思いまでは消しきれなかったのです。
リディは共感されるべき存在だった理由
先の項目まで「リディが嫌われた理由」について挙げてきましたが、私的にはリディは「多くのファン達から共感されるべき存在」だと感じています。
確かにミネバに拒絶された後の変貌ぶりやバナージへと嫉妬心は、お世辞にも”かっこいい”とは言えません。
しかし、リディのように好きな異性から振られた時の絶望感や、振られた相手と仲良く接している同性に対する嫉妬心は、生きている中で誰もが一度は味わってきたはずです。
さらにシャアやアムロでさえ、決して強くてかっこいい姿だけでなく、ファン達や周囲のキャラクター達からも呆れられる程に、情けない一面も何度も見せてきました。
リディをシャアやアムロと比較してしまうのは少し厳しいかもしれませんが、シャアやアムロの抱えてきた悩みが少し現実離れしていた内容も含まれていたことに比べて、リディの抱えていた悩みや辛さは現実社会で生きている我々とも共通していたようにさえ感じます。
そのように考えてみると、シャアやアムロ以上に人間臭いリディは、本来ならば多くのファンや視聴者たちからも嫌われるのではなく、強く共感されるべき存在のキャラクターだったと思います。
リディのその後 | バナージやミネバと再会するまでの経緯
リディはラプラス事変の終結後、軍を退役して政治家の道を歩み始めました。
しかし終戦後から政治家を目指すまでの間も、バナージやミネバとの再会も含めて、非常に複雑かつ難儀な出来事に遭遇していたのです。
半年間の軟禁生活から解放された後にバナージの死亡と生存を聞かされた
ラプラス事変やミネバによるラプラス宣言が終わった直後、リディは地球へと戻りバンシィ・ノルンを連邦に引き渡しますが、半年間もの軟禁生活を強いられていました。
その軟禁生活も結局は父親の権力で解放されたと同時に“中尉”へと昇進しましたが、リディにとっては親の力による解放や昇進が気にいらなかったのです。
家では父親(ローナン)から、そして酒場で待ち合わせていたアルベルトからも「バナージの死亡」を聞かされたものの、これはあくまでも表向きの情報でしかなく、リディ自身は信じられません。
そして、バナージの生死について苦悩する中、いきなり現れたカイ・シデンから「バナージは今も生きていること」を聞かされます。
バナージのその後に関しては「【機動戦士ガンダムUC】バナージが死亡しなかった理由|その後やミネバとの結婚も考察」の記事を参照ください。
軍に復帰したのはバナージの生存を確かめるため
軟禁からの解放やカイから聞かされた情報の後で軍に復帰したリディですが、この時に配属されたのはネェル・アーガマでもラーカイラムでもなく『ガンダムNT』に登場したダマスカスです。
さらに配属された部隊もイアゴ隊長率いる“シェザール隊”でした。
ラプラス事変終結後も、連邦とネオジオンおよび「袖付き」の残党部隊による戦争が続いていましたが、リディは隊長や仲間たちの命令を無視しては、単独でメガラニカを目指します。
再びリゼルに搭乗して出撃したリディの行動や命令違反の動機をイアゴ達から理解されないまま、ジオン共和国の領域にまで突入したリディですが…
リディの復帰や行動は全て「バナージの生存を自身の目で確かめるため」のことです。
ミネバとの再会で自身の恋心にも終止符をうつ
単独でメガラニカの前に立ち、自身の名を名乗りながらバナージを呼び続けます。
そんな中、リディの目の前に現れたガンダムMark.Ⅱからの通信映像でミネバが姿を見せます。
約半年ぶりの再会を果たしたミネバからお礼を告げられたと同時に「いつか、また会おう」と告げられます。
これにはミネバ自身がラプラス宣言で話していた内容とも被っていますが、リディが終戦後にバンシィを地球に持ち帰ってくれたおかげで、連邦との共同による「サイコフレームの研究を封印する協定」を結べていたのです。
そして、今後は地球と宇宙、連邦とジオン…
それぞれを代表する者として、お互いに手を取り合って協力し合わなければならないことを聞かされました。
『ガンダムUC』最終話ラストの時点でミネバへの恋心に見切りをつけたはずのリディでしたが、そう簡単に断ち切れるはずもなく、終戦後でもどこかで引きずっていた感もありました。
しかし、この再会時の会話によってリディ自身が本当にミネバへの恋に終止符を打つと同時に、今後はお互いに協力し合える関係を築いたのです。
バナージとの再会でミネバを託した後に政治家の道を歩み始める
映像越しによるミネバからの話が終わった後には、ガンダムMark.Ⅱのコクピットからバナージが姿を現します。
やっと自身の肉眼でバナージの生存を確認できたリディは、姉(シンシア)から昇進祝いとしてプレゼントされたお守り(飛行機のペンダント)をバナージに投げては、バナージもそれを受け止めます。
二度目も受け取ってくれたバナージに対して「男と見込んだ」と、かつて自分が言われた台詞を今度はリディが言い返しながら、ミネバをバナージに託したのです。
バナージやミネバとの再会も済ませた後には、正式に軍を退役して再び地球へと戻ります。
その後も休む間もなく、父親によりダカール中央議会議事堂へと連れていかれますが、ここが「リディの新たな戦場」であると告げられました。
それは即ち、今後は父親の秘書として修行することを意味しており、ここまでの経緯を経て、リディは政治家への道を歩み始めたのです。
サイコフレームの完全な封印にはリディの政治力も必要となる?
リディの軟禁生活や一時的に軍へ復帰した期間も数えると、リディが本格的に政治家への道を歩み始めたのは『ガンダムNT』本編よりも少し前の時期だったと思います。
(リディがシェザール隊にいた頃には、ヨナがまだ入ってきていませんでしたからね)
ただ、本作品の終盤で映されたユニコーンは解体どころか、単に拘束されていただけに過ぎず、これだけではまだ完全には封印しきれていない状態です。
おそらく『ガンダムNT』以降の時代でもミネバやバナージ達だけでは難しいと思われますが、ここで「リディの政治力」による協力も重要とされていくはずです。
この時期は政治の世界ではまだ駆け出しのリディですが、数年後には父親からも一人前と認められた末に“議長”の座も引き継ぐものと思われます。
そして新たな議長となったリディが得た人脈や外交関係による協力も、ユニコーンとバンシィを完全に封印するために必要な要素とされていくはずです。
ミネバサイコフレーム封印に関しては「【機動戦士ガンダムUC】ミネバの声優・演説の意味|封印やバナージとの結婚についても考察」の記事を参照ください。
まとめ
今回はリディの性格や「嫌われた理由」を紹介しました。
さらにラプラス事変終結後から政治家として歩むまでの経緯についても、バナージやミネバとの再会も含める形で迫ってみました。
確かにストーリー後半に入ってからのリディは、ある意味で強化人間なみの情緒不安定さも見せながら狂気に変貌しており、嫌ってしまうファンや視聴者が多くても仕方ないかもしれません。
それでも、大いに人間臭い一面こそがリディの1番の魅力であり、私的にはバナージやフロンタル以上に思い入れが強まったキャラクターでもあります。
ミネバとの関係は確かに残念だったものの、ミネバの目的である「サイコフレームの封印」を完全に遂げるためには、地球や連邦に属しているリディの協力も必要とされていくはずと思っています。
コメント