『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』は宇宙世紀を舞台とした新たなシリーズ作品として月刊ガンダムエースで連載されていた小説作品です。
原作の完結後にはOVAとTVシリーズとして、アニメ化も果たしました。
本記事では、フル・フロンタルの正体が「シャアのクローンではない理由」について考察していきます。
さらに、フロンタル自身がシャアにも負けないカリスマ性を得るまでの過程にも迫ります。
本作品の人物相関図は「機動戦士ガンダムUCの人物相関図!登場人物・キャラクターの一覧を解説」の記事をご覧ください。
フル・フロンタルとは
フル・フロンタルは、U.C.0096の時代におけるネオジオン(通称は「袖付き」)の総帥を務める、仮面の男です。
素顔や声ともにシャアと似ているため「赤い彗星の再来」とまで呼ばれています。
フロンタルのプロフィール
階級 | 大佐 |
搭乗機体(MS) | ギラドーガ(エピソード0) シナンジュ・スタイン(エピソード0) シナンジュ ネオ・ジオング |
フロンタルはテロ組織となり下がったジオン軍残党の最大派閥である“ダイクン派”を自身のもつカリスマ性でまとめ上げている人物です。
同じ最大派閥”ザビ派”のミネバを「姫」と呼びながら立てることで、組織の分裂を食い止めていました。
フロンタルの性格をシャアと比較しながら分析
フロンタルとシャアは別人であり、フロンタルを”シャアと同じ”として見ることもできません。
ここでは性格面だけに絞る形で「シャアにあってフロンタルには欠けていたもの」に迫りながら比較してみたいと思います。
シャアは表面上では冷静沈着かつ大人びた性格の持ち主でした。
しかし内面では“心の弱さ”や“人間臭さ”に溢れており、ファースト後半からはその内面をハッキリ見せ始めています。
同じファースト最終話では、アムロに対してララァを奪われた怒りや悲しみを剥き出しにしながら戦っていた場面もありましたが、これもシャアにある“人間臭さの1つ”です。
さらにララァと死別した後もレコアやナナイと恋人関係を築いていきますが、この2人に対しては本当の愛ではなく、自分の心の辛さを癒すためや目的を果たすために必要な”道具”と見ていたに過ぎません。
しかしフロンタルの方は違っており、シャアにあった“弱さ”や”人間臭さ”がありませんでした。
バナージやミネバに対して表面上では優しい話し方で接するものの、人間関係に冷たい上“自我そのもの”が欠如しているのです。
フロンタルは自身のことを「ジオンの理想を受け継ぐ者たちの意思を受け入れる器」と告げていた上「周囲が望むのであればシャアになる」という考え方で戦ってきました。
これらの発言や考え方により「自分の考えを大切にしない」という点はシャアと正反対と言えます。
これでは、シャアをよく知るミネバから「空っぽな人間」と言われても仕方ありません。
フロンタルの声は声優「池田秀一さん」が担当
フロンタルの声を担当している声優は「東京俳優生活協同組合」に所属している池田秀一さんです。
池田さんはファーストガンダムのシャア役を始め『ガンダムSEED DESTINY』でもデュランダル役を担当されており、ガンダムシリーズと深い縁をお持ちです。
池田秀一さんの代表作(キャラクター)は、以下のとおりです。
- 『無敵鋼人ダイターン3』コマンダー役
- 『るろうに剣心』比古清十郎役
- 『カードファイト!!ヴァンガードG』明神リューズ役
- 『PERSONA5 The Animation』獅童正義役
フロンタルの正体 | シャアのクローンではなかった理由
『ガンダムUC』本編がまだ展開中だった頃は、フロンタルの正体を「シャアのクローンなのでは?」と考察するファンも多かったそうです。
しかし、その予想や考察は大きく外れた結果となりました。
フロンタルの正体はシャアに似せて作られた強化人間
結論から言ってしまうと、
「フロンタルの正体はシャアに似せて作られた強化人間(人工ニュータイプ)」です。
元々はシャアと全く異なるタイプの男性が、モナハンの計画により強化人間に変えられた後、整形手術などを施して「シャアと同じ素顔や声に変えられた」と考えるのが、最も妥当な説だと思います。
『ガンダムUC』の前日譚として描かれたコミック作品『バンデシネ Episode0』でも、アルベルトが「シャアに似せた強化人間か何か…」と呟く場面がありました。
アルベルトもフロンタルの存在だけは既に聞かされていたものの、ここで出た台詞の中にある「似せた」という言葉が、完全なクローン体でないことを語っているように感じられます。
もしもフロンタルが完全なクローンとして作られ、アルベルトにもそのように知らされていたならば、この場面で「クローン体」や「シャアをコピーして…」等の言い方をしていたはずですからね。
フロンタルがシャアのクローンではない根拠とは
フロンタルがシャアのクローンではない理由や根拠を「クローン人間」という言葉と簡単な意味から考えていきましょう。
クローン人間とは、1人の人間の遺伝子から生み出されるコピーであるため、顔や声が瓜二つな上に体型もほぼ同じです。
しかし、シャアとフロンタルでは身長や体格に差があり過ぎる時点で、クローンと言われても少し違和感が残ります。
シャアが少し華奢でスマート寄りな体型だったのに対し、フロンタルの体格はシャアよりも一回り大きめです。
さらに軍服を着ている姿からも、少し筋肉質な肉体に見えます。
身長においても似たような違和感があり、『Zガンダム』以降のシャアが180cmだったのに対し、フロンタルの身長(正式な数値)は明かされてないものの、180cmを軽く超えているように見えたんですよね。
フロンタルをシャアに似せて作られた理由とは
フロンタルをシャアに似せて作り出された理由とは「シャアを失ったネオジオンの組織を再び束ねられる存在が必要となったため」であり、ジオンの外務大臣であるモナハンの閃きから「シャアの再来計画」が開始されました。
「フロンタル」という言葉には“全面的な”や“徹底的な”という意味が込められています。
フロンタルもまた、自身をシャアに似せて作り上げたモナハン達から「徹底的にシャアを演じろ」と命令されてきたはずであり、劇中ではシャアを演じ過ぎてきたあまり、フロンタル自身の中にあった“本来の性格”や“自分の思考”そのものが欠如していったものと思われます。
フロンタルにシャアの思念が入ったのはアクシズショックの影響と思われる
フロンタルがシャアのクローンではないと断定した場合「何故フロンタルの心にシャアの思念が入っていたのか?」という疑問が出てきます。
フロンタルは劇中でシャアと同じような台詞を言う場面が何度もありました。
さらにネオ・ジオングに搭乗してユニコーンとバンシィ・ノルンを迎え撃つ中では「また敵となるか、ガンダム…」とまで言っており、まるでアムロのガンダムと戦い続けた時の記憶を残していた感もあります。
これには『逆襲のシャア』ラスト場面で起きたアクシズショックの中で、フロンタルの脳裏にシャアの記憶や思念の一部が流れ込んだ影響と考えられます。
これも1つの仮説に過ぎませんが、フロンタルもシャア総帥が率いたネオジオンの一兵士として戦っていたのではないでしょうか?
そしてギラドーガに搭乗したまま、地球へと落下していくアクシズをアムロと一緒に押し返そうと張り付く中、または他の兵士たちと一緒に飛ばされる中でシャアの思念や精神の一部をたまたま拾ってしまった可能性も考えられます。
これらの経緯を経て終戦および帰還後、モナハンから「シャアに似せた強化人間に変えられる候補」として、フロンタルが選ばれてしまったのではないでしょうか。
シャアの正式なクローンが生み出されるのは『ガンダムUC』から100年後の未来?
フロンタルはシャアのクローンではなかったものの、富野監督により80〜90年代にかけて執筆された『ガイア・ギア』に登場した「アフランシ・シャア」というキャラクターこそが、シャアの正式なクローンとされています。
本作品は『逆襲のシャア』から約110年後の未来となる宇宙世紀200年代の時代を舞台に展開された物語であり、アフランシはシャア本人の細胞を分割および再活性化させた上で、遺伝子まで再現されています。
そこまで作り上げたクローン体に“シャアの記憶”を収めたメモリーチップを埋め込むことで生み出されたのです。
本作品は、現時点(2022年)では「宇宙世紀シリーズの正史には含まれていない」とされていますが、このように生まれる過程まで明確に説明されると、U.C.0200以降の未来ではアフランシと似たタイプの「シャアの正式なクローン」が本当に誕生するのでは…とも考えてしまいますよね。
フロンタルの能力 | シャアにも負けないカリスマ性を確立させるまでの経緯
ここでは、フロンタルに最も求められていた能力を紹介すると同時に、シャアにも負けないカリスマ性を確立させるまでの経緯について迫りたいと思います。
フロンタルに求められた能力はシャアにも負けないカリスマ性
フロンタルに最も求められていた能力とは、ネオジオン残党たちをまとめ上げるための「シャアにも負けない偉大なカリスマ性」でした。
ただ、フロンタル自身が「袖付き」の本拠地であるパラオに来たばかりの頃は「シャアの再来」という呼び名ばかりが先走りしてしまい、アンジェロを始めとした部下や兵士たちからは、まだ完全にまでは信用されていない状態でした。
偉大なカリスマ性を得るために必要な手段とは
姿や声がシャアに似ていようとも、兵士たちから見れば本当にシャアの再来とまでは信じきれません。
そんな部下や兵士たちを纏め上げられる程のカリスマ性を得るためには、実戦の中で自身の強さや操縦技術を見せつけることで「フロンタルこそが総帥に相応しい」と認めてもらわなければならないのです。
そんな状況の中、フロンタルが偉大なカリスマ性を確立させる転機を迎えるのが『ガンダムUC』本編より2年前に行なった「シナンジュ強奪作戦」となります。
シナンジュ強奪作戦中の実戦でカリスマ性を確立させた
U.C.0094 6月15日に行われた「シナンジュ強奪作戦」での戦闘でアンジェロやベテラン兵士たちが苦戦させられたジェガンD型の群れを、フロンタルの赤いギラドーガ1機だけで次々と撃墜していきました。
その圧倒的な強さに加えて赤い機体(MS)で颯爽と飛び続けるギラドーガの姿は、まるで本物の“赤い彗星”のように見えていたのです。
さらに、連邦のウンカイに隠されていたシナンジュ・スタインを奪って乗り換えてからは、残った巡洋艦2隻もあっという間に撃沈してしまい、この時点でアンジェロ以外のベテラン兵士たちからも「フロンタルこそが”シャアの再来”であり、自分達の総帥となるべき存在」と認められたのです。
まとめ
今回はフロンタルの正体が「シャアのクローンではない理由」について考察していくと共に、如何にして「シャアにも負けないカリスマ性を確立させたのか?」という過程も紹介してみました。
確かに『ガンダムUC』本編が原作小説やアニメ版で展開されていた時期には、フロンタルを本当にシャアのクローンであると考えてしまうこともありましたが、その結果はかなり意外な形で外れた感も大きいです。
それでも、今後も新しい宇宙世紀シリーズ作品は制作されていくでしょうし、いつかはアフランシのような「完全なるシャアのクローン体」と設定されたキャラクターが登場する可能性も、決して”ゼロ”とは言い切れませんよね。
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